最近、空前の投資「ブーム」です。
若い会社員は特に、ブログやユーチューバーなどの「カリスマ投資家」が発信する情報に憧れ、投資に熱を上げています。株式、投資信託、NISA、暗号通貨、不動産投資など、いろいろな投資についての情報が溢れています。
投資で豊かな老後にしたい、不労所得を得て早期退職をしたい、あるいは自分もカリスマ投資家になってカッコよくいたい。
それぞれが自分の夢を持っています。
もちろん投資は悪いことではありません。アメリカ人の個人資産のうち、「投資に分類される資産」は46.2%もあるというデータがあります。一方、日本人は18.6%に留まります。
1995年からの個人資産の伸びは、アメリカ人は3.32倍。日本人は1.53倍と2倍の開きがあります。
この差は投資が生活に根差しているからというのが通説です。
日本人は「貯蓄から投資へ」という政府のスローガンの通り、着実に投資をする人が増えています。
かつて投資は大きな資産を持つ人がやるもの、というイメージがありましたが、最近は「積み立て型」の投資が推奨されています。
積立投資をするときに必ず耳にするのが「ドルコスト平均法」という言葉です。
まずこれを簡単に説明します。
価格が変動するモノを買う時、現金で一気に買うと、「高値でつかんでしまう」危険が付きまといます。
買った次の日に値段が急落するかもしれません。そうすると大損です。
しかし毎月、固定した金額でコツコツ買い進めたらどうなるでしょうか。
下の表のように、値段が安い時は口数を多く購入でき、高い時は少なく購入する。
そうすることで、長期間買い続けることで平均的な値段で多くの口数を積み上げることが出来ます。
これがドルコスト平均法と呼ばれています。
このドルコスト平均法、聞いたことが一度はあるかもしれません。
著名な投資家、ウォーレン・バフェット氏もこの投資方法を推奨していることから、日本では特に語られています。
しかし、これには誤解をされている部分が多分にあります。
積立投資をするときのリスク対策の一つではありますが、万能ではないということです。
まずドルコスト平均法について歴史を紐解いてみます。
実は日本でこの言葉が出てきたのは、バブル崩壊後と言われています。
株価が急落することで、証券会社は「手数料収入の減少」「信用取引縮小に伴う金融収入の減少」「自己勘定で保有する株式の評価損」という苦難を背負うことになりました。
そこで困り果てた証券業界が「発見」したのが一般国民の「家計資産」だったと言われています。会社員の毎月の家計から、コツコツ支払ってもらえる手法を発見したのです。
一定の値段で買い進めてく投資手法は、リスク回避の万能薬のように説明されることさえあります。
しかし残念ながら、
ドルコスト平均法は、決してリスク回避のための手法ではないのです。
その本来の目的は
「沢山の口数を積み上げること」
です。
リスク回避とは分けて考えるべきです。
口数を多く積み上げることがリスク回避につながることは大いにありますが、ドルコスト平均法=リスク回避と言い切るのは少々乱暴です。
必ずしもリスク回避が出来るわけではないのです。
たとえば次のような状況を考えてみましょう。
もし、毎月2万円で米ドルを買い続けるとします。
24ヶ月で48万円を支払ったとします。平均1ドル100円で購入できたとします。この時点での価値は48万円(4800米ドル)ですね。
しかし25ヶ月後のある日、ドルの値段が1ドル50円であったとすると、4800米ドルは日本円として24万円と減少したことになります。
積立を続ける(買い続ける)先で、積み立てたドルを円に戻したいとなった時、その日の為替レートで損失を出すこともありえるということです。
もし30年積み立てたとしても、解約するのはその一日でのことです。
解約するある一日の為替レートで、損失を出すのか利益を出すのかが決まってしまいます。
当然、損失を出すなら解約はしないでしょう。
利益を出せる為替レートになるまで待つはずです。
そのとき、自分がもし80歳だったら?
あと5年、10年と待っていられない場合もあります。
せっかく積み立てた資産を手に取って自分で使えないというのは、れっきとしたリスクです。
この場合、最終局面の両替する時にはドルコスト平均法はリスク回避には解約時には役に立たなかったということになります。
ただ投資口数を多く積み上げただけです。
このように、ドルコスト平均法は、円に両替するときも「時間」が伴わないとメリットを発揮できないことがある、ということを見落としています。
ドルコスト平均法は、あくまでも投資口数を多く積み上げるために使う手法です。
そこから先は保有するか売却するかを見定めていく時間の余裕を持つ必要があります。
それまで待てるのであればドルコスト平均法のメリットを享受できます。あるいは、投資の終わりが近づいたら安定運用に切り替え、価格の急落に備えるなどの工夫が必要です。
ドルコスト平均法は、あくまでも「リンゴを沢山買う方法」としては役に立ちますが、買ったリンゴを売る場面では味方をしてくれるとは限りません。
使い時が決まっているお金(教育費や老後の住宅購入など)を貯める時には要注意です。
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