家を買う時に読むブログ

住宅購入に役立つお金のことを解説

木造住宅の平均寿命はどのくらいなのか

今日のお話の結論は、「木造住宅の平均寿命は自分次第」です。

 

ライフプラン相談会では、建物の寿命の話はとても重要です。

 

例えば寿命が30年の建物に対して40年ローンを借りるのはあってはならないことであり、もし建て替えるとしたらその解体費と新築費はどこから調達するのか?という問題もあります。

 

一生に一度の買い物のはずが、実は一生に二度だったというのが現実です。私の実家も23年で解体し、建て替えています。

それは珍しいことではありません。多くの人が古い家を壊して再建築しているのです。

 

再建築する理由はいろいろありますが、家を壊すと言うのはそう簡単な理由ではありません。よく言われているように「日本人は新しいものが好きだから」「間取りが不便だから」という、ふわっとした理由で解体するわけではないのです。

巨額の借金を背負って買ったものをそんな理由で解体するわけがありませんよね。

 

解体する理由の多くは、「もう住めないから」です。

つまり寿命です。

シロアリ被害、構造材の腐れ、外壁や壁内の腐れ、基礎の鉄筋コンクリートのひび割れ、などによって、住み続けることが安全上でも健康上でも難しくなったから解体となるのです。

 

建築基準法によって、住宅の基礎は鉄筋コンクリートでなければならないと定められていますが、その基礎部分の寿命が30年~70年くらいと差はあるものの意外と短いのです。

コンクリートが中性化していき鉄筋の部分が水分で錆びてしまうと、爆裂現象と呼ばれるような欠けが発生します。こうなると多くは解体の道へ進みます。補強工事や建物をジャッキアップしての基礎のやり直しもできますが、その費用は新築ローコスト住宅が買えるほどの規模になります。

 

(参考)

https://www.j-cma.jp/?cn=102637

 

こう考えていくと、ふと疑問に思います。

 

「そもそも木造住宅の平均寿命はどのくらいなのか?」

 

以前このような記事を書きました。

 

nagaokafpoffice.hatenablog.com

 

ここでは滅失登記(解体した建物)の平均年数を求めるという方法によって、寿命を推定しています。

これによると、木造住宅の平均寿命は約31年ということになります。

これが一つの説です。

 

他にもいくつかあって、「区間残存率推定法」と呼ばれる学術的な研究もあります。早稲田大学による研究では、日本の木造住宅の平均寿命は約40年程度、最長で80年程度かと推定されています。ただし1997年のデータですので、それよりは伸びているものと思われます。

(出典資料)

http://www.f.waseda.jp/ykom/aijjnl200210.pdf

 

一方で、神社仏閣の建物は数百年経っているものもあります。奈良の法隆寺は創建年(建築した年)が西暦607年ですから、築1400年以上だということになります。(一説には伽藍の部分は火災により一度壊れ、再建されたものであるとも言われています。)

 

しかしだからと言って、木造住宅は何百年も持つと言い切るのは乱暴です。

特に法隆寺は当時朝鮮半島から伝えらえた最新技術、最高の職人、贅沢な材料を使って建てられたものです。樹齢1000年を超える桧を使用するなど、現代で言うならスカイツリーを建築するようなプロジェクトでしょう。釘ひとつとっても、寿命の短い現代の洋釘ではなく、純度の高い鉄を刀と同じ多重構造に鍛造した和釘が使われています。1400年経っても錆びていないという当時の超高級建材なのです。

 

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そして法隆寺の場合は、巨額の費用をかけてメンテナンスを繰り返し、昭和には49年間もかけて大補修が行われています。管理を担当する専属の棟梁もいます。

そう、メンテナンス費用が桁違いなのです。

 

神社仏閣と一般住宅を同じ木造建築物としてひとくくりにするのは無理があります。

 

日本の木造住宅は、工法と建てる土地の条件、気候条件などにより、30年~100年程度の寿命ということになります。

随分と差がある寿命ですが、要するに、80年持つ家を建てれば寿命は80年になるということです。

 

神社仏閣の寿命が長いのは、軒が長く雨が当たらない作りであるとか、多くは山などの広い郊外の土地に建てられていて通気がいいとか、真壁作りで柱が乾燥しやすいとか、住宅ではないので調理や呼吸などの水分でダメージを受けないとか、いろいろな条件が重なっています。

いくら神社仏閣とはいっても、特に豪雪地帯では激しく劣化し再建築されたものも多くあります。「昔の技術はいい」とは言い切れません。やはり研究された現代の建築方法が長寿命になります。

 

身もふたもない結論ですが、寿命は自分がどんな家を建て、どのようにメンテナンスをしてきたかで決まります。

 

最近まで湿地だった土地に、施工が雑な建物を建て、メンテナンスをケチったら30年でも長い方かもしれません。

基礎は早くに劣化し、建物は腐朽し、シロアリにも食われ・・・という結末が想像できます。

 

でも予算を抑えるために安い土地はそこしかないし・・・

予算が限られているから、ローコスト住宅メーカーしか選択肢がないし・・・

 

と思うことでしょう。

 

しかし、一生に二度も住宅を購入すればもっとお金は苦しくなります。

 

寿命の長い、立派な家を建てる。

相応の予算を確保する。

 

そのために、一度ファイナンシャルプランナーに相談して自分に相応しい予算を算出しましょう。

 

いま無理なら少し待てばいいだけです。数年待つ間に家計を改善し、貯蓄を増やしてからいい家を買えばいいのです。

 

慌てて寿命の短い家を買うことがないようにしたいものです。

 

nagaokafp.jp