こんにちは。
住宅専門ファイナンシャルプランナーの長岡です。
今日のテーマは、「定年退職後の住宅ローン返済は甘くない」です。
最近、地方都市では最長40年返済の住宅ローンが急増しています。多くの金融機関では完済時の年齢を満80歳以下と規定しているので、40歳以下の人は40年返済の住宅ローンを借りられるということになります。
ソニー銀行では完済時に満85歳以下という規定の商品が登場しました。
借入時の平均年齢が2003年は37歳だったものが、2020年では40歳と上昇しているのが理由でしょう。ソニー銀行は最長35年ですが、完済時85歳とすると50歳以下であれば最長のローンを借りられるというメリットにつながります。
なぜそんな後期高齢者になるまでの長いローンを借りるのか?と疑問に思う人も多くいます。
理由は意外なところにあります。
それは
収入が低い場合、返済比率(収入に占める返済に費やす割合)の規制で短い返済期間を設定できないため、です。
この点について詳しいことは
住宅ローンはいくらまで借りられるか? - 家づくりのお金のこと
過去記事を参照してください。
収入によっては短い返済期間のローンが借りられないのです。
それに、子供の教育費や単身赴任などで出費が多い時期に住宅を購入するため、あまり負担の大きい返済計画は避けたいところです。
住宅金融支援機構の投資家向け資料(2000年~2020年)によると、以下のような数字が見えてきます。
2020年の平均値は以下のようになっています。
借入時の年齢 40歳
借入額 3100万円
融資期間 33年
完済時年齢 73歳
60歳時のローン残高 1300万円
ここで問題となるのは、完済時の年齢と、定年退職時のローン残高です。
結論から言うと、わずかな老齢年金から毎月住宅ローンを返済するのは、多くの人にとっては不可能です。
自分の将来の年金の受取り予想を計算する日本年金機構のサービスがあります。
https://www.nenkin.go.jp/n_net/n_net/estimatedamount.html
夫婦合わせての年金額から毎月の住宅ローンを支払うのは不可能だと実感するはずです。
期待していた退職金が支給されない上に預貯金も十分でなく、住宅ローンの返済のために退職後もアルバイトをしている方は少なくありません。毎月10万円の返済分だけを稼ごうと思っても、それが79歳まで続くとしたらどうでしょうか。
多くは疲れてしまいます。ギブアップして家を売却し楽になりたいと思うかもしれません。しかし、その建物と土地は買い手がつくほどの価値があるでしょうか。
住宅を買った若い時に、目先の安さと安心を優先し、郊外の安い土地にローコスト住宅を建てていたり、建売住宅を買っていたとしたら売却は不調に終わるかもしれません。
しかも、建物の解体と地盤改良工事の杭の撤去(埋設物)の費用を差し引いても価値が残る地価でしょうか。
そんな不安と悩みを後期高齢者になって抱えなければならないとしたら、人生の最後は地獄そのものです。
ライフプラン相談会では、定年退職時にローン残高以上の現金貯蓄があることを安全な返済計画としています。
家庭のキャッシュフロー(収支の流れ)を計算し、65歳の定年退職時にローン残高よりも少ない貯蓄しか出来ない予想であれば、対策を考えなければなりません。
借入する住宅ローンを少なくするか、定年退職後も働き続けるか、あるいは家計を見直して貯蓄できる計画を立てるか、どれかが必要です。
このうち、働き続けるというのは最も優先順位を下げて考えるべきです。
優先すべきは家計を貯蓄を作ること、資産運用によって少しでも増やすことです。
そして定年退職と同時に「建物の解体・建て替え」を迫られるクオリティの家は絶対に買わないように注意すること。
借り入れを少なくしたいがために、ローコスト住宅や建売住宅を検討したくなるかもしれませんが、冷静になるべきです。
ローコスト住宅は住宅ローンの完済前に建物の寿命が到来する危険があります。(もちろん販売する側はそんなことは絶対言いません)
借金が残っているのに、家はボロボロ、リフォームすると現金はなくなり、建て替えようにも無収入なので銀行は貸してくれない、そんな事態になるかもしれません。
シロアリ被害でもない限りは倒壊はしませんが、寒かったりカビが繁殖したりする古い家屋で高齢者が生活するのは過酷です。
定年退職後に住宅ローンが残るのは避けられないと覚悟しておくべきです。
絶対条件は、定年退職時に必要な貯蓄が出来ていることです。そして建物のメンテナンスが安く済み、寿命が長いこと。古くなった家でも健康に暮らせることです。
このためにメーカー選びと将来の家計の計算を専門的にアドバイスしてくれるファイナンシャルプランナーが必要です。