家を買う時に読むブログ

住宅購入に役立つお金のことを解説

個人事業主が家を買うために必要なこと

今日のテーマは、

個人事業主が家を買うために必要なことです。

 

個人事業主が家を買おうとするとき、真っ先にぶつかる現実が「住宅ローンの審査に落ちる」というものです。

 

所得が安定している会社員とは違い、個人事業主の所得は全く安定しません。商売の調子がいい年もあれば、当然不調の年もあります。

たとえ売上を伸ばしたとしても、経費がかかりすぎてお金がほとんど残らないことも珍しくありません。コロナ禍のように社会情勢の大きな変動に弱く、真っ先に悪い影響を受けてしまうのも個人事業主です。

 

住宅ローンを借りようとする時に金融機関はその「不安定さ」を問題視します。

継続して返済していくためには継続した一定の所得が必要なので、その証明として「直近三期分の確定申告書の控え」を提出するように求められます。

 

ここで大きく誤解している人が多いのですが、金融機関は確定申告書の「収入」の額だけでは住宅ローンを貸せるかどうかは判断していません。「所得」の額で判断します。

収入金額が2000万円あったとしても、経費を差し引いた所得金額が150万円であれば、年収150万円と見なされるのです。考えてみると当然の話なのですが、個人事業主が日頃意識しているのは収入金額=売上金額なので、「収入が2000万円もあるので住宅ローンは必ず借りられるだろう」と思いがちです。自分は自営業者としてそれなりに順調なのだというセルフイメージがあります。

しかし、いざローンの審査をすると所得金額のせいで落ちてしまう。そうなると相当なショックを受けます。

 

誤解のないように言うと、個人事業主だから住宅ローンを借りられないということは絶対にありません。

 

個人事業主が住宅ローンを借りるためのポイントをいくつかまとめました。

 

 

確定申告の仕方を見直す

 

そもそも確定申告での課税は次の図のようになります。

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収入(売上)から経費(必要経費)を差し引いた残りが所得です。この所得から基礎控除などが差し引かれ、課税されるという仕組みです。

 

この所得額が小さいほど納める税金は少なくて済むため、必要経費を多く計上するのが自営業者の中では「節税」しているという認識です。もちろん正当な必要経費であれば計上して当然ですが、課税額を抑えたいがあまり無理に必要経費を作る人たちが大勢います。

 

これが節税なのか脱税なのか、その是非はともかくとして所得金額を低くしてしまうと、住宅ローンの審査に落ちやすくなるのです。

 

そのため、住宅ローンを借りるためには最低でも3年間は一定以上の所得金額となるように確定申告をする必要があります。

 

収入(売上)が900万円だとしたら、必要経費は250万円、所得650万円という状態が3年続けば住宅ローンを借りられる可能性が高くなります。

もちろん所得が高い分、所得税と住民税も高くなりますが、これが本来あるべき姿です。

 

収入金額(売上)も要注意

 

所得金額を一定額以上で確定申告していたとしても、落とし穴があります。

それは収入金額(売上)です。

 

本来の審査は所得金額で行いますが、その安定性を計るのが収入金額の欄なのです。

過去三年間、所得金額は650万円で一定していても、収入額が例えば2000万円~900万円と大幅に変動していたら、金融機関としては商売の安定性に疑問を持ちます。特に下落傾向があれば審査は厳しくなります。

 

所得金額だけが重要とも言い切れません。

 

借りられたとして、長期間にわたって返せるか?

 

借りる時には金融機関の審査さえ通過できればOkなのですが、そもそも35年~40年わたって毎月返済することが出来るでしょうか。

 

東京商工リサーチの調べによると、2020年に倒産した企業の平均寿命は23.3年でした。飲食業などサービス業だけに絞ると18.0年とさらに短くなります。

これはあくまでも法人のデータですが、個人事業となるともっと短くなると思われます。住宅ローンの返済期間よりもはるかに短い平均寿命だということは、将来返済が困難になることも十分予想できます。

 

また倒産しないまでも、今の年齢での体力と気力を長年にわたって持続することが出来るでしょうか。若い時と同じ仕事量を、65歳になっても継続できるのはごくわずかな人だけです。個人事業主はあくまでも1人~数人程度の人員で仕事をしています。人員の多い法人企業と比べ、事業主の体力気力が衰えたら売上も落ちてしまいます。会社員であれば年齢とともに地位が上がり仕事量が減っても収入は確保されます。それと同じように考えることは出来ません。

 

個人事業主の場合、住宅ローンを35年返済で借りたとしても、35年で返済するものと考えない方がいいでしょう。

個人事業で商売をすることの大きなメリットは、短期間で大きく稼げる可能性があるということです。いま商売が順調な人は、繰上げ返済を繰り返しながらなるべく短期間で完済する意識が必要かもしれません。10年先は自分の商売も社会情勢も予測できません。

今はまだ商売が小さく、これから大きくしたいと思っている人は、少し冷静になって将来性を計測しましょう。まだ購入しない方がいいケースもあります。

 

35年~40年間継続して返済していく前提で返済計画を立てるのは、著しく無理があります。

 

支払いが厳しくなった時に備える

 

個人事業主がローンの返済が厳しくなるのは、主に二つの原因があります。

 

ひとつは健康上の問題

自分が働かなければ収入が途絶えるので、ガンなど大病をするととたんに支払いに窮してしまいます。

自営業者は会社員と違い傷病手当金などの保障がありません。自分で各種保険に加入するなどの対策が必要です。

 

もうひとつは、やはり経営上の問題です。

所得が下がっていと支払いは困難になります。数ヶ月は貯蓄で持ちこたえたとしても、コロナ禍のように社会情勢の変動が長引くと住宅ローンの支払いが難しくなる人が増えます。

こちらは保険で備えることが出来ません。

 

いずれにしても、もし支払いに窮しても返済を滞納することは避けなければなりません。3回の滞納で保証会社から一括返済を求められると、民事再生(個人再生)などの手続きが必要になります。そうなると商売上、借入ができなくなり実質的に廃業、倒産へと向かいます。

 

支払いが難しくなったときには、早めに自宅を売却することも想定しておく必要があります。そのためには、地方では立地や建物の大きさやデザインなどを考慮しておくべきです。

新築を購入するときに、いくら安くても不便な土地を選んでしまうと、売却が難しくなります。自分だけに便利な特殊な間取りにすると、同じように買い手はつかなくなります。例えば飲食店を経営する人は料理が好きな人が多く、自宅のキッチンも大きくなりがちです。個性的過ぎる設備や間取りにしてしまうと、需要が狭くなってしまいます。

 

今後の日本では人口減が待っています。郊外の過疎化、公共交通機関の縮小などが予想されているなか、売却しやすい立地はどこか考えてみましょう。

 

自己資金は絶対に用意する

 

将来売却しやすくするためには、住宅ローンの残債が自宅の価値よりも低いことが絶対条件です。

自宅の価値よりもローン残債が大きくなるのは、購入時に諸費用を含めた金額を借り入れたためです。少なくとも諸費用分は自己資金で用意するべきです。

出来ることであれば、総予算の2割程度の自己資金を目指しましょう。

 

最近は住宅ローンに自動車ローンなどの債務を上乗せするケースがありますが、売却や借り換えをする予定がある場合は避けるべきです。

 

 

個人事業主だから住宅ローンを借りられないということは絶対にありません。しかし返済計画とリスク対策は専門家に相談して決めてください。

 

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