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住宅購入に役立つお金のことを解説

家計は「誰が」管理すべきか?

今日のテーマは

家計の財布は誰が管理すべきか?

です。

 

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家計を管理するのは、妻なのか、夫なのか、それとも共同作業なのか。

そこを考察してみました。

 

先日、とある月の25日のことでした。午前中、近所にあるショッピングセンターのATMに用事があり立ち寄ると、行列が出来ていました。

 

並んでいたのは見たところ40歳代~50歳代の女性ばかりです。全員、女性です。

 

今日はATMで何があるのだろう?と少し考えてみて、気づきました。会社員の多くは毎月25日が給料日なのです。

 

なるほど、給料日なので夫の口座から現金を下ろし、決済用の口座に移したり、どこかに振り込みをしたりしているのでしょう。ATMでの作業がひとりひとり時間がかかるので、行列ができているわけです。

 

いまどきネットバンキングも電子マネーも利用せず、現金で生活をしているんだなあとしみじみ眺めていると、またふと思ったのです。

 

「なぜ、ここにいるのは女性ばかりなのか?」と。

 

つまり家計の管理をしているのは圧倒的に女性だということなのでしょう。

 

この傾向は、弊社でのライフプラン相談会でも明確に表れています。

 

あくまでも弊社の相談会を利用した世帯の統計ですが、

 

世帯主・配偶者ともに40代~50代の世帯は、約8割が家計を妻が管理しています。残りのうち1割以上が夫が管理、夫婦の共同管理は1割に満たず少数派です。

 

妻の管理とは、世帯収入のすべてを一旦妻が預かり、そこから支払いや貯蓄などに振り分けていくということです。この場合、夫には「小遣い」という名称の「手当」が渡されます。夫は家計の全体像はほとんど理解しておらず、決して多くはない小遣いの中でやりくりしています。

傾向的に妻管理の世帯は貯蓄がゼロということはほとんどありません。世帯年収にもよりますが、「それなりの」貯蓄があります。それなりのというのは曖昧な基準ですが、最低でも世帯年収の1/3くらいという感覚です。「貯金がなくはない」と自覚できるような額ということです。

 

一方、夫の管理とは、妻管理の逆です。夫が給料日になると専業主婦の妻に「生活費」という名称の「手当」を渡す方法です。

夫管理は傾向的に夫婦仲が悪い世帯に多いようです。夫婦間の話し合いが全くなく、信頼関係が崩壊していているので夫は収入の明細を開示しないのです。

夫管理では貯蓄が出来ていることは稀です。ゼロや借金状態のほうが多いでしょう。夫管理の家庭が住宅ローンを借りて新居を持つことも多くはありません。

この方法は残念ながら、夫から妻へのDVに発展する危険があります。

夫婦喧嘩をすると生活費を渡さなかったり、不当に少ない金額しか渡さない男性も少なくありません。また、管理する側の夫が浪費をしたり、軽率な投資をして大金を失うことも起こりえます。夫管理というものの実際には管理できておらず、妻子が貧困に巻き込まれていきます。

 

このように妻か夫が家計を管理するのは40歳代以上の世帯に非常に多く見られます。

一見妻管理型は貯蓄も出来るし良いことのように思えますが、幸福度から考えるとどうでしょうか。

夫婦どちらも自分たちの将来のお金に幸福感・期待感を持てているでしょうか。

 

一方、20代の夫婦は共同管理型が圧倒的多数です。妻管理型は1割程度しかなく、夫管理型は弊社では見たことがありません。大半が夫婦で話し合って管理するスタイルをとっています。

 

あくまで弊社の相談会での統計です。比較的高価格帯の住宅を検討している、世帯年収600~1000万円の世帯での統計なので、社会全体とは若干違うかもしれません。

 

これについては2012年に国際比較調査(ISSP-2012)が発表されています。

またこの調査をもとにした論文も発表されていて、それがこちら。

 

『日本と世界の家計管理の実態と動向』

http://kakeiken.org/journal/jjrhe/107/107_06.pdf

 

この比較調査によると、「妻が管理型」は日本が突出して多いことが分かりました。

 

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二位以下は、フィリピン、韓国、ロシア、メキシコ、チリと続きます。

 

これを見て気づくのはまず、妻管理型はあまり裕福ではない国に多いということです。日本、中国、ロシアにしても少なくとも100年前は発展途上国だったはずです。

 

発展途上国は歴史的にジェンダーロール(社会的性差とその役割)を強く期待される社会です。例えば、「男は外で働くべき」「女は家事をすべき」というような性別の捉え方です。

日本はかつて家父長的家制度という家庭運営が一般的でした。一家の長である父親が妻と子供(とその妻)を厳しく支配し、人生の選択の自由を与えないというものです。現代でも「家を継ぐ」という発言をする人がいるように、この前時代的な価値観はいまだに残っています。

この制度の中で、妻の役割は「家事をすべてやり、お金の出納も管理する」というものだったのでしょう。

 

25日にATMに行列を作る女性たちにはこのような背景があるのだと思います。

 

妻管理型の上位国に共通するのはもうひとつ。

夫管理型も多いということです。これはもしかしたら男尊女卑の傾向を表しているかもしれません。妻から金銭の自由を奪うようなジェンダーロールの様子が見えてきそうです。

日本の17.3%も世界的にはかなりの多さです。しかも共同管理型の11.2%は世界最下位です。

 

お金の管理の仕方は社会の在り方を投影しています。

日本が世界的にも性格差(ジェンダーギャップ)が大きい社会というのは否定できないでしょう。

 

参考までに「妻管理の割合が低い国」を見てみましょう。

 

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ヨーロッパ各国がひしめいています。妻管理型が少ないだけではなく、夫管理型も少ないのです。

スウェーデンに至っては夫管理型は2.0%しかありません。

 

日本においては共同管理型は11.2%ですが、ヨーロッパ各国の多くは50%を超えています。フィンランドは一見共同管理型が少なく見えますが、拠出型(夫婦がお金を出し合う)が抜きん出て多いと分かります。

 

家計の管理の仕方が、自分の人生がジェンダーロールに縛られていないか考えてみるべきかもしれません。ひいてはそれが自分の人生の生きやすさ・生きづらさに繋がっていきます。

 

20代の夫婦が夫管理・妻管理のどちらかに偏っている場合、すぐに見直すべきでしょう。

共同管理型に必ずしていくべきです。

「妻管理が楽だから」「夫管理が責任がなくて楽だから」という親世代の感性を無批判に受け継いでしまうと、子供世代の価値観(ジェンダーロール)に影響を与え、結果的に生きづらさを感じさせることになりかねません。

 

では共同管理はどのように運営していくべきでしょうか。

 

その点について具体的な方法を次回の記事で紹介します。

 

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