家を買う時に読むブログ

住宅購入に役立つお金のことを解説

「ミニマリスト」「断捨離」はほどほどに

本日のテーマは

 

ミニマリスト」という言葉に踊らされてはいけない

 

です。

 



ここ数年、ミニマリストという言葉をよく耳にするようになりました。

ご存じかと思いますが、ミニマリストとは「必要最小限の持ち物でコンパクトに暮らすスタイル」のことです。

 

『フランス人は服を10着しか持たない』という本がずいぶん前に流行ったこともありました。

フランス人が全員10着しか持たないわけが絶対にありませんが・・・どうも日本人は家の中の物を少なくすることに憧れるようなのです。

 

それはなぜか?

 

日本は戦後、アメリカに次ぐ大量生産・大量消費のライフスタイルの中で経済成長をしてきました。

自動車、洋服、家電製品などありとあらゆる工業製品は短期間で買い替えることを前提としてモデルチェンジを繰り返し、日本人はそれを競って買い続けてきたのです。

 

このことは決して悪いことではなく、大量生産・大量消費のサイクルがあるからこそ雇用が生まれ、日本の物づくりが発展し、経済が成長してきたのは否定し難い事実です。

 

しかし、その一方でこれは日本人が祖先から刷り込みされている価値観やしつけと矛盾してしまいます。

 

学校でも家庭でも、

 

物を大切にしましょう

いいものを手入れをして長く使いましょう

生産者に感謝しましょう

 

という「しつけ」を繰り返し受けたはずです。

 

その結果として大量に物を買い、大量に消費して廃棄するということに罪悪感を持ってしまうのだと個人的に思っています。

 

それもあって断捨離という言葉も人気があります。

要するに物を捨てましょう、というだけの掛け声ですが、廃棄することへの罪悪感を紛らわしているだけでしょう。(捨てると運気が上がるなどのスピリチュアル要素も加われば、より心地良くなります。)

 

最近、住宅を買う時にもこのミニマリストという言葉を持ち出す人が増えてきました。

 

家は小さい箱でいいとか、シンプルな暮らしをしたいとか、収納は少しでいいとか、納戸があるから物が増えるので要らないとか、そういう意見をよく聞きます。売り手までもがそう言うケースが増えました。

 

もちろんライフスタイルは人それぞれですが、ミニマリストという心地よい掛け声に踊らされていませんか?と注意喚起をしています。

 

小さい建物が流行っている背景には、建材や人件費や光熱費のコスト高という売り手の事情もあります。建物価格が高騰すると買える人が減り、売り上げ減となってしまいます。

買い手としても小さい建物は光熱費や固定資産税、メンテナンス費用が安く済む可能性があり需要が高まっています。

そのため建築会社では努力して小さい建物を、買いやすい価格で提供しているのです。

 

しかし実際のところ、この小さな建物は生活の仕方に割り切りと犠牲が必要なのですが、これを「ミニマリスト」という流行り言葉で美しく見せる風潮が生まれています。

 

では極端に狭い家(延べ床面積15〜20坪程度)で家族4人が不自由なく暮らせるものでしょうか。

 

元から小さなアパートで物が増えず快適に暮らしていたというのであれば、大きな変化はないと思います。しかしアパートの部屋が手狭だったという人の場合は、多少延べ床面積が増えたところでいずれ同じことになります。

引っ越しの時にモノを捨てるのですが、すぐにまた増えます。

 

ミニマリストなんていう心地よい響きは忘れた方がいいと思います。

 

物を買うのはそれが欲しかったからでしょう。さらに物を買うのは、もう一つ欲しくなったからです。欲しくて買ったモノなら並べて愛でるのが当然です。それに罪悪感を持ったり、捨てたりするなんて馬鹿げています。

 

物を沢山手に入れたい人は、物が沢山ある生活を楽しんだ方がいいと思います。整理整頓できる間取りを研究すべきであって、「小さい家なら物を買わなくて済む」「ミニマリストに憧れる」などと考えるのは大失敗のもとです。

 

新築の家を買ったのに、小屋を増設したりトランクルームを借りている人は少なからずいます。トランクルームの月額費用を払えるのなら、あと数百万円分の予算をアップして、延床面積を増やした方がコスパとしても良かったはずです。

 

もし年頃の娘さんがいて、プチプラのいろんな服を買ってお洒落を楽しみたいと思っているのに、「フランス人は10着しか持たない」などと説法するのでしょうか。私個人としては、かなり歪んだ価値観の押し付けだと感じてしまいます。

そもそも若い世代はいろんな服を着て自分のスタイルを身につけていくものです。

 

もともと物が少ない生活なので小さい建物でいい、という場合を除いて、延べ床面積が極端に狭い建物を買うのは冷静に考えてください。

家を買ったの機会にミニマリストに変身、なんて不可能です。

 

日本の住宅の寿命(滅失登記までの年数)が世界的に短いのは、耐久性の問題だけではなく間取りが不便という事情があると言われています。購入から50年ほどの自分の健康、家族の変化、ライフサイクルを想像しながら、不便のない間取りを考えていく必要があります。

 

流行り言葉はほどほどにしましょう。

 

nagaokafp.jp