本日のテーマは
意外と知らない!?変動金利の正しい使い方
です。
思えば15年ほど前、変動金利で住宅ローンを借りることに否定的な人がとても多かったように思います。
10年固定金利は当初1.9%、フラット35の金利も同程度という時代で、変動金利(適用金利)は1%程度でした。変動金利で借りた方が返済額が安く済むはずでしたが、当時は「これから金利が上がります!」と住宅営業パーソンだけでなく、一部の銀行員までが声高に主張していたのを覚えています。
変動金利のメリットを説いていたブロガーが炎上し、閉鎖に追い込まれたこともありました。集団ヒステリーとすら言えるほど、固定金利至上の風潮があったのです。
2012年に第二次安倍政権が始まったとき、なぜかマスコミが金利が上昇すると煽り、変動金利から固定金利に借り換えた人が続出しました。
ところがその後の日銀のゼロ金利政策を受けて住宅ローンの金利は固定金利も変動金利も大きく下降。あるネット専業銀行では、変動金利0.31%となって現在に至ります。
残念なことに固定金利に借り換えた人は、この10年で余計な利息を払ったことになります。
最近では住宅営業パーソンも銀行員もファイナンシャルプランナーも、声をそろえて「変動金利がいい」と言うようになりました。固定金利を強く推す人たちは少数派です。
まあ、いい加減なものです。
あの当時、変動金利は危ない!とヒステリックに言っていた人たちが変動金利のメリットをしたり顔で説くのですから困ってしまいます。
このように世間で流布される金融情報はいい加減なものだと覚えた方がよさそうです。昨今の投資ブームも同じです。「声が大きい人」の言うことに簡単に流されているのが実情です。しかもその声の大きな人というのが、ユーチューバーやお笑い芸人、情報商材をネットで売る人達、インスタグラムでアフィリエイトをする人達など、多くはアマチュアですから、アテにはなりません。
コロナ禍でも同じでしたが、正確で科学的な情報は埋もれてしまうものです。
マネーセミナーやライフプラン相談という名目の催し物も、その実情は信頼性が低いケースがあります。セミナー講師のポジショントークで特定の金融商品などに誘導されていることが多々あるのです。
あの時代、なぜ多くの人が固定金利を勧めたのか。それにも背景があるのですが違う機会にお話しします。
前置きが長くなりましたが、本題に入ります。
15年前に固定金利で借りた人と、変動金利で借りた人が、返済総額にどのくらいの違いがあったのか、少し検証してみたいと思います。
そして、変動金利には正しい使い方があるということも説明していきます。
10年で利息総額の半分を払う
変動金利でも固定金利でも同じで、元利均等返済という返済方式では、返済10年で利息総額のおよそ半分を支払う仕組みになっています。
35年返済の場合は、10年(120回)で47.2%を占めています。
(40年返済の場合は割合は少し低くなり、40%程度です)
15年(180回)では65%にも及びます。
ここから分かるのは、利息の半分を払う最初の10~15年間にわざわざ高い金利で返済してはいけないということです。
高い金利で返済すれば、10~15年間のうちに支払う利息の総額も高くなります。
利息だけでない、ローン残高も違う
金利が高いほど、ローン残高の減り方が遅くなります。
つまり元金の返済スピードに差があるのです。
0.31%と、1.5%を比較すると、10年間で約161万円もの差があります。利息に差があるだけではなく、元金の減り方にも差があると気づいていない方も多くいます。
最初の10年間~15年間に大切なこと
最初の10年間~15年間が勝負と言っても過言ではありません。
・安い金利で借りて毎月の返済額を抑えること
・安い金利で借りて元金を減らしていくこと
・この期間に一部繰上げ返済を行うこと
これを意識しましょう。
もし15年後に金利が上がったら?
もし15年後に金利が大きく上がり続けるような社会情勢となったら、どう対処すべきでしょうか。
その時には
・繰り上げ返済をして元金を減らす
・固定金利に借換する
という対策が考えられます。
もし10年後(121回目から)に固定金利に借換したとすると、毎月の返済額と総支払額はどうなるでしょうか。
そして最初から固定金利で借りる場合とどのくらいの差があるのでしょうか。
それを試算してみました。
結論から言うと、
最初の15年を変動金利で返済し、残りの20年を固定金利で返済した場合、全期間を固定金利で返済するよりも、返済総額が安くなります。
当初の毎月の返済額の差額は、18,639円。
会社員世帯にとって、毎月19,000円近くもの支出の差は生活水準に大きな影響があります。毎月の電気料金分に相当します。
総支払額は529万円も差が生まれました。
これで何が出来るでしょうか。軽自動車の新車であれば2台分に相当します。子供の大学進学費用であれば、国公立大の授業料4年分×2人分に相当しています。
子供の大学進学費用に頭を悩ませているのに、529万円の差額は無視できません。
まとめ
変動金利は短期プライムレートを基準としていて、その短期プライムレートは無担保コールオーバーナイト物を基準に決められています。(詳しく覚える必要はないため以下割愛)
要するに、変動金利は日本銀行の金融政策と連動すると覚えてください。
変動金利と言いつつ、この10年ほどは変動がありません。
今後の金利の行方は日本銀行の総裁しか分かりませんが、あと10年継続するとします。
その10年間の低金利をどう捉えるかです。
10年間とはいえ低金利を使いこなすのか、10年しかないので全期間固定金利にするのか。
その差額は、無視できないほど大きいものです。
住宅専門のファイナンシャルプランナーに相談しながら判断してください。