こんにちは。
住宅専門ファイナンシャルプランナーの長岡です。
今日のテーマは
住宅ローンの金利はどうなる?2023年版
です。
2022年12月、日本銀行がイールドカーブコントロール(金利操作)の運用を見直すという報道がありました。
日本銀行は長期金利、短期金利を誘導し、日本経済にとって最適となるようにコントロールする政策取っています。これをイールドカーブコントロール(YCC)と呼びます。
この日本銀行のYCCは、住宅ローンの金利に大きな影響があります。
住宅ローンの金利はどのように決まる?
そもそも住宅ローンの金利は何を基準に決められているのでしょうか。それが分かれば、今後の金利の動向が少しだけ予想できるかもしれません。
実は、極めてざっくり言うと住宅ローンの金利は日本銀行のこのYCCに影響を受けるのです。
変動金利は、無担保コールレート(オーバーナイト物)を指標にしています。
一方でフラット35などの長期固定金利型は、10年国債の金利を指標にしています。
どちらも日本銀行が目標を持って誘導している金利を指標として決められているのです。
よくある誤解
ここで誤解をしているファイナンシャルプランナーも多くいて、間違った説明を住宅購入者にしていることがあります。
フラット35は10年国債の金利に連動していますよ、と言うFPが結構います。
しかし、それは間違いではありませんが、10年国債と「連動」しているわけではないのです。
日本銀行の政策が変わり、長期金利が上昇する局面に入ったため、ネットニュースでは「住宅ローン金利が上昇する」と騒ぎ始めます。
中には住宅ローンの金利が上がってほしい思惑の人達も沢山いるため、住宅購入者の不安を煽ろうとします。
しかしフラット35の金利は、10年国債が直接反映する仕組みではありません。
正確には住宅金融支援機構(JHF)が発行する、住宅ローン担保証券(RMBS)の利率で決まります。
そもそもフラット35は証券化ローンと呼ばれ、住宅ローンを担保に投資家から資金を調達し、住宅購入者に融資する仕組みです。
このRMBSは毎月発行されるのですが、この利率が魅力的であるほど投資家が買ってくれるということになります。
このRMBSの金利は、10年国債の金利を勘案して決められているということは分かっていますが、具体的な設定方法は公開されていません。住宅ローンを担保にしているため、住宅購入者の破綻リスク、早期償還リスク(借り換えをしてしまうなど)などを考慮する複雑な計算で成り立っています。
投資家にとって魅力的であるということは、日本国債よりも高利回りである必要があるため、結果的に10年国債に影響を受けるということにはなるのかもしれません。
このRMBS、格付けが日本国債より上(AAA)という点もポイントです。安全な投資先としての魅力があり、住宅購入者が減るリスクも考えると「住宅ローン金利の高騰」にはつながらないと見られています。
これも私見ではありますが、住宅ローンの変動金利は長期金利とは関連が薄いため、2023年中の変動は少ないと筆者は見ています。
2023年の住宅ローンの金利動向は?
金利動向は誰も断言できないものですが
2023年は消費者が家を買えなくなるほどの固定金利の金利上昇は起こらないと個人的には見ています。
北米のように約6.92%もの金利にはなりえないでしょう。(米金融機関フレディーマック 2022年10月13日の金利)
しかしながら、全く上昇しないということはなく、フラット35や10年固定金利型の金利に限っては上昇傾向になると思われます。
そのため、依然として金利の低い変動金利型の魅力が増しています。
変動金利型を利用するときの注意
変動金利型の特徴は、固定金利型に比べて金利が低い(=毎月の返済額が安く済む)ことです。
またルール上、金利が上昇しても返済額は最大でも125%に抑えられるというのも魅力です。
しかし、変動金利型に向いていない人もいます。
・繰上げ返済するための貯蓄が難しい人
・自営業や、会社員で所得が低い人
将来的に大きな金利変動があったら、返済額が抑えられていたとしても一部繰上げ返済をする貯蓄があったほうが安全です。
また、所得が低い会社員や自営業で所得の安定性がない人は、変動金利型よりも固定金利型の方が審査が優しい傾向があります。変動金利では必要な額の融資を受けられないかもしれません。
また、金利が上昇したら固定金利型に借り換えたらいいですよと、住宅営業マンやFPが言いがちですが、期待しない方がいいでしょう。
公務員や大手企業の会社員でない限り、40代後半からの銀行の審査は極めて厳しくなります。特に退職金の制度がない、あっても額が低い方の場合は、借り換えは難しいと思います。
変動金利型には一定のリスクがあり、現金での貯蓄を作っていけることが借りてもいい条件です。もし家計のキャッシュフローに不安がある方は、固定金利型を選択しましょう。
変動金利は長期的には上昇する可能性がある
2023年は変動金利に大きな動きはないかもしれませんが、長期的には上昇に転じる可能性が大いにあります。
一部のメガバンクでは住宅ローンの取り扱いをやめる方針のようです。低金利で薄利を負うビジネスから降りるということです。
長期金利が上昇しているので、銀行としてのポートフォリオにおいて住宅ローンの重要性が下がっているのです。
2024年以降には住宅ローン金利にもう少し動きが出てくるかもしれません。
くれぐれも、変動金利はずっと変動しない、という考え方はしないようにしてください。