こんにちは。
住宅専門ファイナンシャルプランナーの長岡です。
今日のテーマは
「家は買うな」と主張する人たちはどんな人?
です。
筆者はTwitterやYouTubeを毎日見るのが習慣となっていますが、結構な頻度でこんな主張をする人達を見かけます。
・家は買わない方がいい
・賃貸が安全
・家を買うのは情弱
・貧乏になりたくないなら家は買うな
まあ・・・多くの人は、そう決めつける人達の言葉に耳を傾けることはないと思います。
家を買うべきかor買わないべきか、などという極論は存在しません。
家を買った方がいい人、買わない方がいい人の二種類がいるというだけです。
あるいは、欲しいけど買えない人もいるでしょう。欲しくないけど買わざるを得なかった人もいるはずです。
全員が買うべきではないし、全員が買ってはいけないというわけではありません。
しかし、このような決めつけの極論に影響を受ける人が想像に以上に多いのは、コロナウィルスの騒動でも見覚えがあると思います。
弊社でライフプラン相談をしていても、「家を買うなんて馬鹿がすることだ」などとネットの影響を丸出しにして主張する人達(全て中高年男性)が時々現れます。
ご本人の家計の流れを分析した結果、今すぐ買わないと悲惨な将来になる人ほどそういう主張をする傾向があります。
持ち家が欲しい配偶者と大喧嘩になっているケースもよく見ますし、それが原因で離婚した方々もいます。
この記事では、家を買ってはいけないとなぜ主張するのか、それはどんな人達なのかを冷静に分析してみたいと思います。
それを知ってから、自分に持ち家が必要なのかどうかを冷静に判断してみてください。
むやみに影響を受けない方がいいかと思います。
家を買ってはいけないひと主張する人達をいくつか分けてみました。
収入に不安を感じている人
特に地方都市では「昇給なし・退職金なし・ボーナスなし・定年退職まで勤められるか疑問」という方がとても多くいます。年収は300万円程度、小さな子供がいるので配偶者がフルタイムで働けない。世帯年収は400万円弱。
その状態では持ち家なんか無理だろうと思う人もいるかもしれませんが、この所得層には家はよく売れています。この理由は後で説明しますが、本当に所得が低い人達は家を買っているのです。
しかしそれなりの規模の会社に勤め、それなりに収入があり、配偶者もフルタイムで働いている人が「将来に不安がある」と言うケースがあります。不安があるだけであれば対策を立案すればいいのですが、中にはネットで見かけた極論にハマることがあるのです。
「家なんて消費でしかない、ローンを組むなんて馬鹿、そんなお金があったら投資に回した方がいい」そう主張するのです。
専門家の立場から言わせてもらえれば、家賃を消費して毎月3万円の積立投資をしても、家賃で消費した分を取り戻すほどのパフォーマンスを出すことは奇跡に近いと思います。さらに老後の家賃分まで投資で利益を上げることなど、現実的なのでしょうか。
不安が強すぎて冷静な判断を避けたり、不安が強すぎてネットの極論に安心感を求めるというのが実情なのです。学歴が高く、いい職業に就き、それなりの年収がありながらなぜ不安なのかと他人からは見えますが、不安は主観です。不安だと思ったら不安なのです。
しかし、家を買う人は馬鹿、などと極論に走るのが今どきのネット事情なのかなと思います。
決断するのが怖すぎる人
大きな借金をするとき、誰でも怖いものです。しかし「失敗したくない」という思いが強いほど、決断は出来なくなります。
これがあまりにも重篤だと回避性パーソナリティ障害とも言えるそうですが、怖いという思いが重すぎると逆に極端な正当化・一般論化に走るケースがあります。
家を買ってはいけない、という極論に安心してしまうのです。しかしそれは一時的な現実逃避に過ぎません。
家を買える年齢には限りがあります。決断を回避しているうちに、買いたくても買えなくなります。50歳を超えて大きな住宅ローンを借りられるのは公務員や大手企業勤務の方に限られます。年を取るほど自己資金の金額が重要になるのですが、明確な計画がないと思うように貯蓄ができない危険があります。
結果的に家は買えなくなりますが、それでもいいと言えるほどの主体性がないのが他人から見て心配です。
マネーリテラシーが低い人
これは20代にありがちなのですが、金融知識(マネーリテラシー)に非常に興味を持っている人たちがいます。特に資産運用について勉強をしている人が増えているようです。
お金の話がタブーだった昭和~平成時代から考えると、とてもいいことのように感じます。
しかしその知識が自己流で身につけたものだったりすると、結果的に「無知」でしかありません。体系だった勉強をせず、ネットで仕入れた「雑学」を知識だと勘違いしていると、あっけなくネットの極論に染まっていきます。
マネーリテラシーを高めようと思っているのに、むしろ逆方向に向かっているのです。
多くは「家を買わずに投資するのが安全」という主張に染まる傾向があります。ほとんどが男性です。雑学を収集した結果こじらせた感があります。
コロナウィルスの騒動も似ています。厚生労働省が提供する情報を見ずに、ユーチューバーの根拠のない情報を信じてパニックになった人達は少なくありません。これと同じことがマネーリテラシーでも起こるのです。
正しいマネーリテラシーを身につけるためには、その情報源が重要です。業者が行うマネーセミナーなどではなく、金融庁が発信する情報を中心に学習するべきです。
また体系的という点ではFP資格3級を目指すと一通りの基礎が身につきます。資格取得を目的にせず、テキストの読み込みを中心に学習するといいと思います。
マネーセミナーはその講師の実績や経験、知識レベルに差があります。一定のリテラシーがないと講師の話を判断できないので、初心者にはお勧めしません。鵜呑みにして講師の利益に誘導される危険もあります。
マネーリテラシーを身につけて、極論に染まらない判断力を養いましょう。
その主張が自分の利益になる職業の人
「マイホームを住宅ローンで買うよりも投資しましょう」と盛んに言う人達をよく観察すると、ワンルームマンション投資の営業だったりもします。住宅ローンを持っていると不動産投資ローンが借りられなくなるので、家を買ってほしくないのです。
年収500万円以上の勝ち組会社員の方向けのマネーセミナー、なるものがInstagramの広告によく現れますが、これもマンション投資の勧誘です。
年収が500万円くらいないと不動産投資ローンが借りられないという、それだけの意味です。こういう勧誘をする職業の人は、世間の人が持ち家を買わないことが自分の利益になるでしょう。
また、極論は支持を集めやすいので広告収入が欲しいユーチューバーなどは好んで言う傾向があります。確かに「家を買うべき!」という逆の主張では再生回数は稼げません。キャッチーな主張=どきつい極論、なのが現代なのです。
住宅ローンに詳しいはずの不動産業者までもが「家を買うな」という主張をYouTubeでしているのを見ると、倫理観の問題なのかなとすら思います。
家を資産価値で捉えている人
家をどう捉えているかの問題です。
たとえば地方出身で実家が持家だったという人の場合、家を資産価値で判断することはしません。家と土地は代々受け継がれるもので、売買を目的としていないからです。あくまでも「住みか」として捉えています。
しかし都市部では家(特にマンション)は売買を前提として捉える傾向があります。いつか売買する可能性がある以上、売却時の資産価値を常に意識しています。
定年退職までは都心のマンションで暮らし、それなりの値段で売却して老後資金にするということが現実的な地域に住んでいる方もいます。
家を投資として考えてみると、地方の戸建ては投資には圧倒的に不向きです。値上がりどころか売却する時は二束三文にしかなりません。買い手がつかない立地もあります。
だから「買うな」という発想になるのです。
ローンを苦しんで払っても売れもしない、と考える人にとってはそうなります。
だから家を買うなと一般論にして大きな声で主張すると、地方在住にも関わらず影響を受けてしまうのでしょう。
住みかとして捉えれば、住宅ローンを払えるかどうかの問題でしかないはずですが、資産として考えれば売却のことがセットなのです。
家を買うべき人、買うべきでない人の違い
そもそも家を買うべき人、買うべきでない人がいます。
本来、家を買う目的は「住みか」の確保です。
投資ではありません。
定年退職をして無職になった時、賃貸住宅を借りるのは相当苦労をします。大きな資産がある高齢者であれば問題はないですが、預貯金が少しだけで年金暮らしをする人の場合、部屋は借りられないと思っていいでしょう。特に単身者は極めて難しいです。
近年、家賃保証会社の審査は高齢者には厳しいのです。連帯保証人をつけても大家が高齢者はNGとするケースも多々あります。孤独死をされると物件の価値が壊滅してしまうからです。
賃貸物件を借りられる人は、現役世代の会社員がメインです。現役世代でも個人事業主や夜職の方は難しいほどですから、年金以外の収入のない高齢者は借りられる見込みは薄いと思って間違いありません。地方であれば絶望的でしょう。
高齢者が生活保護を受給しケースワーカーと主に物件を探すケースも多いのが現状です。「無職で預貯金無し持ち家無し」の高齢者はかなり厳しい住環境に置かれてしまいます。
そのため、現役のうちに持ち家を手に入れ老後の住みかを確保する必要があるのです。
定年退職時に数千万円という大きな資産を作れないと思うのであれば、何が何でも持ち家を買うべきです。
そのため、地方の所得の厳しい人達はなるべく若いうちに家を買うのです。資産価値は全く期待できない物件ですが、老後の住みかを確保する安心感には代えられません。
逆に買うべきでない人はどんな人でしょうか。
所得が低すぎ自己破産する恐れのある人はもちろん買ってはいけませんが、そもそも銀行が融資してくれないでしょう。
それよりも、将来の人生設計が未定の方は家を買うべきではありません。
地方は戸建てもマンションも、資産価値は期待できません。売却する時は大損失を出すのは必至です。
「そのため転勤で遠くに引っ越しもう戻ってこない可能性がある」という人は、家を買うべきではありません。
要するに老後に住むかどうかが判断の分かれ道です。
地方の家はまともな値段で売却できない、継続的に貸すことも難しい、そのいずれにしても大損するというのは動かしがたい事実です。
老後にも住む可能性が高いのであれば、地方に住む方は特に持ち家は一日でも早く手に入れましょう。もちろんそれが寿命の短いローコスト住宅やボロボロの中古住宅であってはいけません。長寿命・低ランニングコストをテーマに検討すべきです。
不確実なこの現代社会で、家を買ってはいけないと聞くとつい耳を傾けてしまいます。しかし極論じみた一般論を真に受けるのはよくありません。
まずは自分はどうしたいのか、買っても大丈夫なのか、専門家の意見を取り入れて冷静に考えてみましょう。