こんにちは。
住宅専門ファイナンシャルプランナーの長岡です。
本日のテーマは、
住んでいるだけで財産を目減りさせる家とは?
です。
日本の住宅が、築後何年で解体になるかご存じですか?
「え?100年くらいは持つでしょ?」
そう思っている人がほとんどかと思います。
違うのです。日本の住宅はびっくりするくらい寿命が短いのです。
寿命が短すぎる日本の住宅
ここに面白いデータがあります。
これは国土交通省が集計した、滅失登記をされた住宅の平均築後年数です。
分かりやすく言うと、滅失登記、つまり解体された家屋が築後何年だったかということです。
これによると、2008年~2013年の期間では、平均32.1年で解体されています。
32年ですよ?住宅ローンの返済期間よりも短いのが現実です。
一方、アメリカを見てみると、2003年~2009年の期間で、平均66.6年。
イギリスでは2001年~2007年の期間で、平均80.6年。
日本の住宅の寿命の短さが分かりますね。
もっとも、これは「滅失登記」をされた住宅の平均年数ですので、
①まだ使えるけれど事情により解体した家も含まれています
②老朽化したが事情により解体せず放置している家(空き家)は含まれていません
日本の新築住宅の寿命は32年!と言い切れるものではなく、解体された家は平均32年でしたよというデータです。
それにしても、アメリカとイギリスと比べたら短すぎます。
住宅の寿命が短い理由
日本の住宅の寿命が短すぎる原因には何があるのでしょうか。
原因は主に三つあると言われています。
高温多湿の気候
日本は四季がはっきりしています。特に夏は亜熱帯のように暑く、冬は雪が積もるほど寒いですよね。
これによって結露が建物構造を劣化させるのです。
高度成長期に建てられた住宅は壁内結露が発生しやすい状況です。
結露が増えるとシロアリが繁殖し、あっけなく構造体を食いちぎられてしまうのです。
木材を劣化させるのはシロアリだけではなく、木材腐朽菌という菌類も原因としてあります。木材乾燥率が20%以上で高温多湿であれば繁殖していくという恐ろしい菌です。菌から発生した分解生成物はシロアリを誘引する働きがあるなど、いいことがありません。
これらを防ぐためには木材に薬剤を加圧注入する方法が現在は有力とされますが、ご想像の通り、高価格となってしまいます。ローコスト住宅ではそんな木材を使えないことが多く、寿命は短くなるのです。
間取りが悪い
たとえば地方の農家の建物は100年以上持っていることがあります。いわゆる古民家です。これは建てる時に構造体にしっかりお金をかけたという背景があるのですが、一番は「家族の人数や住み方をよく考えて間取りを作っている」ということがあります。
農家は伝統的な家族構成で長年暮らしてきました。つまり祖父母、父母、子供の三世代で暮らすという生活様式が長年続いたのです。このことによって、自分が高齢者になったときにどう住まうかがイメージしやすい間取りとなっています。
一方、高度成長期以降に主に都市部で多く建てられた住宅は、核家族を想定しています。若い時の生活に合わせた間取りであるため、高齢者となると、「二階に上がれない」「トイレと風呂が狭い」「寒くて体がきつい」などの不便が出てきます。
そのため、平均32年で建て替えられてしまうのです。30歳の時に買った家が、62歳で建て替えるという計算です。
中古住宅市場が未成熟
劣化しやすい住宅を濫造してきた結果、中古住宅に価値がほとんどないというのが現在も続く状況です。「どうせ売れないのなら壊して新しい家を買う」あるいは「売れないのだから建物を壊して土地を売る」ということになりがちです。
アメリカやイギリスと日本が大きく違うのは、中古住宅市場が発達していないという点です。古くなるほど価値と価格が上昇していく市場では、資産として手入れを繰り返して所有し続けるはずです。
新築時に価格優先で家を建てると、結果的に資産を失うだけになるということです。
住宅資産を733兆円分も捨ててきた日本・・・
短い期間で解体と新築を繰り返してきた日本ですが、驚くようなデータが存在します。
それは、日本人が住宅に対してどれだけのお金を失ってきたか?です。
赤い線が、住宅建築に費やしたお金の累計です。青い棒が現在残存している住宅資産です。
これによると、2015年において、日本人は733兆円ものお金を失ったことが分かります。
(しかしこの数字は、住宅資産額の推定方法にも問題があるという意見もあります)
この数字を持ち出すまでもなく、肌感覚としても、住宅の解体現場を一回も見たことがないという人は少ないでしょう。50年前と街並みが全く同じという住宅地も都市部では少ないはずです。
それほど日本人は家を使い捨ててきたのです。
経済大国なのに生活感覚は豊かではない日本
日本は経済大国と言われるようになっても、生活自体は豊かさを実感できていないと言われています。
その原因の一つがこれなのです。
一世代で一棟家を建て、祖父母の家や父母の家を解体しているのが一般的です。住宅ローンを完済したら解体という早いサイクルです。
そして親子3世代、全員が高額な住宅ローンを借りているという異常事態です。
これでは資産が残るわけがありません。
一方、住宅の寿命が長いアメリカやイギリスでは、祖父母が建てた家をリフォームしながら3世代で相続することが出来ます。
祖父母が残してくれた家のおかげで住宅ローンを持たない父母は、仕事のリタイアと同時に暖かい土地に移住し、子の世代がその家をリフォームしてまた住み続けるということが出来ます。
子供の世代も住宅ローンを借りていないため、収入を投資に回すことが可能になります。その潤沢な投資額が、特にアメリカの株式市場を支えているのです。
その結果、豊かなリタイアが実現します。
日本人よりももっと早い年齢で完全にリタイアし、第二の人生を楽しんでいます。
東京や京都には裕福層な欧米からの観光客が沢山います。彼らはみな高級ホテルに長期滞在し、旅行を楽しんでいます。
一方日本人はどうでしょうか。近場の温泉旅館に一泊二日の旅行に出かけるのが精いっぱい。外国に長期滞在して旅行するなど、夢のまた夢という状態です。
この一因が、住宅ローンの支払いに消えたせいというわけです。
住宅を値段で選ぶのは要注意
昨今、ローコスト住宅と呼ばれる極めて安い価格の住宅が流行しています。
確かに悪くありません。
こだわりの家には見えませんが、清潔で、シンプルで、それなりに快適に見えます。
値段が安いので住宅ローンの返済も家賃と同程度。返済のストレスが少ないでしょう。
しかし、この家が80年間持つでしょうか。
屋根外壁のメンテナンスや設備の交換など、さんざん維持費がかかった上に、住宅ローンを払い終えたら解体することになるかもしれません。メンテナンスにお金をかけなければ、住宅ローンを残して解体する事態もありえます。
住宅を買う時に絶対意識すべきこと
住宅を買う時は
①維持費が安く済む
②長寿命なので子供の世代が住宅ローンを借りなくて済む
この二つを意識すべきです。
メンテナンス費用、設備の交換費用、税金、火災保険、光熱費、金利が上昇した時の追加利息などの維持費を一生分計算してみてください。
本当に払い切れるでしょうか。
65歳の時に解体となっても、建て替えが出来るほどの資産が作れているでしょうか。
これは住宅専門のファイナンシャルプランナーに相談することをお勧めします。
もしそれで無理だなと思ったら、別に賃貸暮らしでも悪くはないのです。