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住宅購入に役立つお金のことを解説

ホームエクイティが老後準備のカギ

今日のテーマは、「ホームエクイティが安定した老後のカギ」です。

 

 

ホームエクイティという言葉を聞いたことがあるでしょうか。

 

これは住宅の資産価値から住宅ローン残高を差し引いた、ネット資産価値のことです。

 

例えば4000万円の評価額の住宅に、4000万円の住宅ローンを借りたらホームエクイティは0円です。

 

しかし支払いが進み、3000万円の評価額の住宅に対して、住宅ローンの残高が1000万円まで減ったとすると、ホームエクイティは2000万円ということになります。

 

下にイラストにしてまとめました。

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実は、このホームエクイティが安定した老後のカギとなると言われています。

 

最近「家は負債なので買わないほうがいい」という論調が若い人の間で増えているように思います。

住宅資金の専門家としては、それは一概に言えないことなのですが、確かに住宅ローンを完済しても老後に住む場所があるだけに見えます。住宅という不動産よりも現金の方が生活するためには重要だと思うのも仕方ありません。

 

いくら資産価値がある土地に住宅を持っていても、それだけでは現金にならないので生活は出来ません。

確かにそうなのです。持ち家があっても家賃を払わなくてもいいというだけで、現金は生まれません。

だから家を買わないほうがいいという意見も分かります。

 

でもそれは高度成長期以降の日本社会では、中古住宅に価値がなかったということが原因なのです。

 

高度成長期からの日本社会では、住宅は短期間で使い捨てるものでした。30年程度で解体になってしまう建物を乱造した結果、資産価値のないボロボロの空き家が増え社会問題になっています。

大量生産大量消費の時代がいまだに続いているので、自動車も同じように驚くほど短期間で無価値の鉄の塊となってしまうのも日本です。

 

戸建てを住宅を買っても、ボロボロなになるので数10年後は無価値。むしろ負の遺産を子供に残すのが現実でした。

 

しかしだんだんと日本人のマインドが変わりつつあります。

 

長期間、価値が維持できる家づくりをしましょうという流れがこの10数年生まれています。

長期優良住宅という国の制度がその一つです。100年持つ家を作り、整備記録を残すことで中古住宅としての流通力を増やすという考え方です。

 

残念ながら決してうまくいっているようには見えない制度ですが、少なくとも住宅の資産価値を上げ、残していく取り組みは今後もっと本格的になっていくでしょう。

 

そのときに、このホームエクイティという概念が大きく取り上げられるはずです。

 

住宅の資産価値が極めて高く、中古住宅市場が活発なアメリカでは、このホームエクイティの概念は一般的になっています。

 

ホームエクイティ=住宅の実質的な資産価値を担保に、ファイナンス(借り換え)とキャッシュアウト(ホームエクイティを担保にした上乗せ融資)が、ここ数年の好景気を支えています。

 

住宅ローンの残債を超える額をリファイナンスし、現金を残す(キャッシュアウト)という仕組みです。なぜこれをするかというと、住宅ローンはどの国でも低金利だからです。

金利で調達した資金を、子供の学資や住宅のリフォーム、自動車の購入に充てることで、アメリカの消費がさらに活発になっているのです。

 

(しかしこのキャッシュアウトが第二のリーマンショックの引き金になると懸念されていますが。リーマンショック前もキャッシュアウトの総額が800億ドルを超えていたとも言われています。不動産市場が低迷し価値が下がると、消費者はクラッシュします。)

 

住宅ローンの返済が進むと同時に、不動産の価値が上昇すると、ホームエクイティも拡大します。

ホームエクイティを担保にして借り入れをする「ホームエクイティローン」は日本でもメガバンクを中心に増えていますが、アメリカのように実質的にキャッシュアウトさせる仕組みも存在します。

 

住宅ローンの借り換え時に、自動車ローンなどの残債を一本化できる、というような勧誘チラシを見たことがある人もいるでしょう。例えばJA住宅ローンでは借換応援型と称して、教育ローンや自動車ローンを「おまとめ」できます。これも一種の、ホームエクイティを利用したキャッシュアウトのかたちです。

 

このホームエクイティを老後に活用しようとすると、どんな方法があるでしょうか。

 

例えば上の表の右はじのイラストを見てください。

 

住宅ローンを完済し、評価額が2000万円、現金が500万円あるとするとホームエクイティは2500万円になります。

この2500万円を利用して、自宅を売却し1500万円で新しい住まいを選べば、現金は1000万円残ることになります。あるいは2500万円でケア付きの住宅に移ってもいいかもしれません。都会に在住の人は地方移住への資金にもなるでしょう。

 

こういう考え方は都心のマンションを購入している人には当たりまえのことでした。

地方では、「一つの建物に一生住む」「子供が継ぐ」という家父長制度的価値観が強く残っていたため、資産価値がない不動産に自分も子供も縛り付けようとするケースが多かったと思います。

おまけに建物そのものも劣化が激しく流通する価値はありませんでした。

年金不安もある時代では、この古来の価値観からは卒業すべきです。将来的に売るという手段を取ることもあり得ると認識しておきましょう。

 

住宅は資産に過ぎません。強すぎる思い入れを持つことで老後生活の支障となりかねません。

 

ホームエクイティを高めるために必要なのは、地方であっても将来性のある土地を購入し建てるということが大切です。そして過去の記事でも再三言うことですが、ローコスト住宅を買わないことです。特に若い世代は絶対に避けるべき買い物です。耐久性が高く、手入れのしやすい建物を買うこと。一見、値段が高い買い物にも感じますが、ホームエクイティとしては有利になります。

長期優良住宅の制度が今後どうなるかは分かりませんが、国の目指す方向としては絶対に変わりません。長期間、長持ちする家を買うのは欠かせない条件になっていきます。

 

余談になりますが、ホームエクイティを利用する老後資金対策としては、もっと危険な方法も考えられます。

 

金利で調達した住宅ローン(10年固定金利)からまとまった金額をキャッシュアウトさせ、そのまま投資信託や変額保険を購入、住宅ローン控除からの還付も受け取り終わった10年経過後に大幅に増えたお金を使って繰り上げ返済をするか、老後まで運用していくという方法です。

最近の外国株の好調でにわかに現実味を帯びてきたスキームです。

 

これは全くお勧めできません。

残念ながらこのスキームを勧誘しているFPが散見されるのが現状です。1980年代のバブル期にこれに似たスキームが流行りましたが、資産を失う者や自殺者を出し社会問題となった暗い過去があります。

不動産の資産価値が下がってしまえば、金利上昇時に借り換えが出来なくなります。また運用に失敗すれば資産価値以上のローンを返済するだけになってしまいます。返済に行き詰まってしまえば担保である自宅を差し出すしか方法がありません。

投資信託や変額保険は老後の資産形成のためには検討すべき金融商品です。歪んだ資金調達ではなく、生活費から捻出するべきです。

 

これから建てるマイホームは、将来の資産価値を十分考慮して検討してください。

 

弊社では住宅購入のお手伝いをしています。ぜひご相談ください。

 

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