家を買う時に読むブログ

住宅購入に役立つお金のことを解説

持ち家がない場合に向き合う現実

こんにちは。

 

住宅専門ファイナンシャルプランナーの長岡です。

 

今日のテーマは、「家を買わない選択について考えてみる」です。

 

家は賃貸でいい

 

日頃、住宅「取得」専門のファイナンシャルプランナーとして相談を受けていると、80%の相談者は「家を買う」という前提で話をします。

 

しかし、当然のことながら、「家を買わない」という選択を前提として相談する方が20%います。

 

何らかの事情で持ち家は買えない、とか

自営業など不安定な収入なのでローンを組むのが不安、とか

ネット上で、家を買うのはリスクしかないという記事を沢山見つけて不安、とか

 

そのような理由で、家を買わずにライフプランを組み立てられないか?と相談に見えます。

 

「家を買う」「家を買わない」を論じる時、多くの人は「善」か「悪」、「正」と「誤」というように白黒をつけようとします。

 

実はこの問題、正解や不正解はありません。

 

少し冷静に情報を整理して考える必要がある問題なのです。

 

この記事では、家を買わないという選択をした場合について、冷静に考えてみたいと思います。

 

家を買わない選択をすることで、向き合う現実をいくつか挙げていきます。

 

①老後の住まいをどうするか

 

例えば65歳で定年退職したとします。

公務員や大手企業勤務の場合、公舎や社宅が用意されていたかもしれません。その住まいから引っ越す必要があります。

住宅手当があった場合も、それは当然支給されなくなります。

 

家を買わないという判断をしたときには、定年退職後にどこで、どのようなスタイルで住むのかについて計画が必要です。

 

賃貸住まいを続ける場合は、家賃を支払えるだけの貯蓄を用意しておく必要があります。平均余命まで20年間程度の家賃ですから、かなり高額になります。仮に月6万円の家賃だとしても、90歳までの25年間で1800万円が必要です。老齢年金から支払うのは現実的ではないため、退職金を含めた貯蓄を取り崩すことになります。

夫が亡くなった後にも妻が家賃を支払っていくのは言うまでもありません。

 

あるいは家賃が安い地方に引っ越す選択もあるでしょう。温暖な地方に引っ越す選択もあります。しかし地方では老後に暮らしやすい賃貸物件は少なく、大家も高齢者に貸すことを渋るケースが多いのが現実です。

 

また、海外移住(長期滞在)を計画してる人も増えています。この場合、例えばマレーシアへの移住の場合は、財産証明と収入証明が必要です。財産は35万RM(945万円)以上保有していること、かつ毎月1万RM(27万円)の収入があることが長期滞在を認める条件です。かつ、15万RM(405万円)を政府に預ける必要もあります。そのうえで、住居を確保し、日本よりも食材の値段が高い国で暮らすわけですから相当な資産が退職時に用意されていなければ不可能です。しかもビザの期限は10年であり終の棲家には出来ません。ガンなどの病気を患ったり、身体が不自由になったら日本に早期に戻る選択も考えられます。

 

定年退職後にローコスト住宅や中古住宅を購入する選択もあるでしょう。しかしこの場合、住宅ローンは借りられません。現金での購入となります。大切な老後資金の大半を住宅購入に充てるのは相当な勇気です。

 

持ち家を買わないとしても、老後の生活について大きな貯えが必要となります。

 

②いま住んでいる賃貸住宅にも寿命は来る

 

賃貸住宅が気に入って長年住んでいるケースがあります。ずっとここに住めばいいのでは・・・とつい思いがちですが、そういうわけにもいきません。

 

アパート経営者の立場になって考えてみると、賃貸住宅には耐用年数が設定されています。木造か鉄骨かで異なりますが、耐用年数までの期間は大家は税金の優遇を受けられます。

耐用年数を超えると、大家は資金繰りが圧迫されていきます。税金の優遇が受けられないことに加え、大規模な修繕が必要になるからです。

大家としては建て替えや解体を決断することになります。

 

家賃を払えるだけの貯蓄があったとしても、大家の事情で引っ越すこともあり得ます。

 

③家賃を「消費」して、「投資」をしても意味がない

 

家を買うより投資した方が安心だ、という論調がネット上によく見られます。

もちろん投資に成功し、数億円単位の資産を持つことができたら家を買うことにこだわる必要はないでしょう。

その後は資産運用の配当金でホテル暮らしをしてもいいわけです。

 

でも投資を優先する人たちは賃貸暮らしをしているのですから、家賃を支払っています。月6万円だとして、年間72万円を「消費」しているのです。30歳から65歳までの35年間で消費する家賃は2520万円。

投資でそれ以上のリターンを得ていなければ意味がありません。

支払った家賃以下のリターンしかなければ、大損をしたとも言えます。

投資をせず利息込み2520万円で家を35年ローンで買っていれば、老後に家賃のかからない住まいが手に入ったということになります。

 

ということは、家を買うというのも老後への投資だとも言えます。

 

住宅ローンを借りることへの恐怖心から、投資の方がいい!と強く主張する夫をよく見ます。しかし投資も相当な恐怖心とストレスを伴うことは忘れないようにしたいものです。

 

④一定の自由が手に入る

 

家を持たないことにはメリットもあります。

 

一つが、自由であることです。

 

賃貸住宅を気分や都合で引っ越し出来る自由があります。広い部屋、便利な立地の部屋、新しい部屋、と環境を変えやすいでしょう。収入が下がったら、家賃の安い部屋に引っ越すこともできます。

 

もし転勤になったとしても、子供が就学前であれば家族で引っ越すことができ、単身赴任をしなくてもいいかもしれません。(配偶者が仕事を辞めなければならないので必ずしもそうとは言えませんが)

 

高額なローンを抱えていないので、教育ローンや自動車ローンを借りやすい自由も考えられます。

なにより、無借金でいることの気楽さが一番の自由でしょう。

 

ただし、その先は①の現実が待っています。お金を貯めておかなければ気楽ではない老後が待っています。

 

⑤将来、実家の建物が手に入るのであれば心配は少ない

 

たとえ貯蓄が上手くいかず、退職金が少なかったとしても、老後の住まいとして実家の建物をもらえたら心配は軽減されます。

 

実家をリフォームしたりメンテナンスする費用はかかりますが、高額な住宅ローンを支払うよりも負担は少なく済みます。

 

定年退職までは賃貸暮らしで、その後は実家に戻り生活するというのもいいかもしれません。

あくまでも実家の建物の劣化が少なければの前提ですが。将来、劣化が少ない建物を貰うために、実家のメンテナンスに対して親に援助し続けるのもいいかもしれません。

相続時に揉めて、建物が手に入らなかったということがないようにすることも大切です。

 

問題があるとしたら、

実家の所在地が遠い場合、配偶者の同意を得られるかという部分です。定年退職するまで過ごしたコミュニティから離れることに同意してもらえるでしょうか。同意してくれたとしても、配偶者の精神面での負担は無視できません。

子供達にとっても、生まれ育った「地元」から親がいなくなり、親が実家に戻ってしまった後は戻る場所を失うことになります。親が住む地方の田舎にわざわざ定期的に来てくれるでしょうか。子供や孫と疎遠になる可能性が高くなります。

自分にとって実家は故郷かもしれませんが、家族にとっては見知らぬ土地です。

心地いいのは自分だけ、家族は迷惑、とならないようにしたいものです。

 

もう一つ問題が考えられます。

親が実家に引っ越した後、子供に相続されてしまうということです。リフォームしたとはいえ、古い建物のはずです。自分が亡くなったあとで、遠くに住む子供に解体の責任を押し付けることになります。

建物の解体だけではなく地中に埋まっている地盤改良工事の杭も除去しなければなりません。相当な費用となります。

また、更地にしたところで買い手がつくでしょうか。手放すまでは固定資産税もあります。親にとってはのどかな山村の土地かもしれませんが、子供にとっては不良物件です。

この実家は誰が相続するのか考えておくべきです。

 

 

ここまでいくつか家を持たないことの現実を挙げてみました。

 

親世代は、家を持つことの社会的信頼などをメリットとして挙げるかもしれません。しかし現代では家を持つことが信用につながるケースは少ないでしょう。

 

またQOL(生活の質)の点を挙げる人もいますが、あくまでも主観の話です。家を持たなくてもQOLが高く感じることもあります。

 

純粋に、持ち家を持ちたくないと感じている人もいるかもしれません。

 

家を買う、買わないどちらにしても、ライフプランは緻密に計画すべきです。

 

当社のライフプラン相談会をぜひご利用ください。

 

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