こんにちは。
住宅専門ファイナンシャルプランナーの長岡です。
本日のテーマは
住宅ローンの連帯債務は、デメリットがありますよ
です。
前回の記事で、夫婦で収入合算をして住宅ローンの借入額を増やし、借入額を増やす方法について少し書きました。
nagaokafpoffice.hatenablog.com
あらためて説明すると、住宅ローンの連帯債務とは、
①夫婦の年収を合算して審査をする
②収入が高くなるので返済比率が下がる=多く借りられる
③配偶者連帯債務者となり、建物の名義も共有になる
というものです。
特に地方では世帯主の年収が十分ではないケースが多いため、連帯債務を利用することがほとんどです。
また都心部においては1億円を超えるようなタワーマンションを買うときにも、世帯年収が高いパワーカップルがペアローンや連帯債務を利用します。
メリットは前述したように、借入額が大きくなることのほかに、夫婦それぞれが通称「住宅ローン減税」を利用することが出来という部分。
また夫婦ともに住宅ローン減税を受けることができることもメリットです。
しかし、大きなデメリットも存在します。
それは
「離婚しても、住宅ローンを払い続けなければならない」
この一点に尽きます。
金融機関にとっては離婚したという事実は関係ありません。二人がそれぞれ個人としてお金を借りているという事実だけが重要なのです。それが夫婦であるので家という「モノ」を買う時に、例外的に合算を認めたというだけです。
離婚したとしても銀行は契約通りにお金を返済してもらうまでです。
しかし、離婚ということは夫婦のどちらかが家から出ていくわけです。住んでもいない家の借金を返済しながら新しい生活をするのは難しいでしょう。
実際は、家を出ていくのだから住宅ローンも払いたくない、払えないというのが現実です。
ではどのようにするべきでしょうか。
連帯債務で家を買った後で離婚した場合、住宅ローンの取り扱いには次のような選択が考えられます。
①連帯債務者を外れて一人名義のローンにする
②家に残るほうが、住宅ローンを一人で借り換える
③連帯債務者を差し替える
④家に残る方が、配偶者の分もローンを支払う
⑤家を任意売却し残りのローンを折半して支払う
覚える必要はありません。離婚しなければ無縁です。
あくまでも知識としてそれぞれ説明していきます。
連帯債務者を外れて一人の名義にする
連帯債務者を外し、住宅ローンの名義を一人にするということです。これは不可能に近いと言えます。
収入合算をした年収で、金利や融資額を決めていたので、ひとりになるということは契約条件の前提が崩れます。
金融機関からは認めることは極めて稀でしょう。
家に残るほうが住宅ローンを一人で借り換える
住宅ローンの残高が少なければこれは可能です。しかし残高が少なくなっているのは年齢が進んだ後です。年齢上の理由で融資を断られる可能性の方が大きいでしょう。
そもそも年収が足りないので収入合算しているケースが多いため、ひとりで借り替えるのは現実的ではありません。
借り換える場合でも、今の住宅ローンに連帯債務者がいる場合、その連帯債務者を外すことは出来ないと定めている銀行もあります。たとえば楽天銀行では次のような手続きとなります。
連帯債務者を差し替える
連帯債務者を違う人物に差し替えるよう、金融機関に交渉することも考えられます。離婚した配偶者と同じかそれ以上の信用状態を持つ人に連帯債務者となるようにお願いするということです。
理屈ではそうなのですが、銀行は認めません。債務者が夫婦であるかどうかは銀行は問題ではないのです。お金を貸したのはあくまで個人です。借りた本人から別人にローンの名義が変更されるという手続きは、常識的にも不可能です。
家に残る方が、配偶者の分もローンを支払う
これは現実的に行われている方法のひとつです。
これまで配偶者が払っていた分を含めて、家に残る方が毎月支払う方法です。ローンの名義や不動産の名義はそのままです。完済した数十年後に不動産の名義変更もします。
一番わかりやすい方法ですが、危険もあります。
もし家に残る方がローンの支払いを滞納したら、元配偶者が一括返済の義務を負います。
また、連帯債務者である元配偶者が不動産を所有したまま、支払いはしていないのですから、元配偶者同士での「贈与」と見なされます。一定の金額以上は贈与税の納税義務が発生します。
さらに、住宅ローンの完済前にどちらかが亡くなった場合、事態は複雑になります。団体信用生命保険を夫婦50%ずつで加入していた場合、家に残った方の債務は免除されても、出ていたはずの元配偶者は支払いの義務が続きます。
ではその時に備えて団信以外の生命保険も残してほしいと思うかもしれませんが、離婚しているので民間の生命保険の死亡保険受取人にはなれません。
すでに住んでいない家のローンの支払いがまた発生することになります。
さらに、元配偶者の親族が不動産の持ち分を相続しているため、出ていったはずの元配偶者と共有で所有することになります。名義を変更したり債務を免除してもらうためには元配偶者の親族と話し合いが必要になります。
複雑怪奇で極めてハードな事態が待っています。相当、紛糾することでしょう。
弁護士の法律相談ではこの方法で決着するケースが多いように思いますが、死亡した時の取扱いを明記して確認した方がいいでしょう。
家を任意売却し残りのローンを折半して支払う
これが最も一般的な方法です。
ローンの残った家を任意売却して清算をします。
家は失いますが、ローンも無くなり、よって連帯債務の関係も解消されます。
しかし、問題は売却してもローンの残高が残る場合です。
これが少額である場合は銀行が分割返済を認めてくれるケースもあります。
分割返済が認められた残りの借金は、財産分与の対象となり折半で支払う義務があります。
しかし、実務としては収入の多い夫の方が全ての残債を分割返済することで着地することが多いように思います。
以上、連帯債務には大きなデメリットも存在します。
20代の夫婦が結婚と同時に住宅ローンを借り、一年で離婚したケースもあります。
離婚を仮定して家を買う人はいません。特に住宅営業マンは幸せなマイホームを売る立場ですので、不幸事を前提としては絶対に話をしないでしょう。
それだけに、連帯債務には極めて冷静になったほうがいいかもしれません。
当事務所のライフプラン相談会ではそのリスクも含めてお話しをします。