長岡FP事務所のブログ

住宅購入のお金のこと

「良い借金」とは?

今日は歴史の話を含めた小話です。

 

日本人の多くに、「借金は悪」という認識が強く刷り込まれていると思います。

 

例えば、現金を貯めて住宅を購入したと聞くと、すごい!と真っ先に思ってしまいます。

新車を現金で買ったと聞くと、堅実だ、真面目だ、という感想を持ちやすいと思います。

奨学金を借りずに大学に進学したと聞くと、裕福な家だ、親は貯蓄して偉い、と考えるでしょう。

 

一方で、日本では借金と聞くと悪いことだと考える風潮があります。

 

クレジットカードの普及でさえ他の先進国と比べ遅れました。キャッシュレスの電子決済でさえ地方では普及が著しく遅れています。電子マネーがクレジットカードからのチャージであるため、「借金」と感じる人がいるせいかもしれません。あるいは、紙幣や貨幣を使わないと不安とまで言う人もいます。

大きな長財布を持ち、コンビニのレジ前で現金を出している人は珍しくありません。

 

「借金をするのは悪いこと・貯蓄は偉い」と日本人が考えるようになったことには、実は歴史的な背景があります。

 

まず貯蓄について紐解いてみると・・・

もともと日本人には貯蓄という概念はなかったと言われています。貯蓄思想は近代になって国が国民に植え付けたものなのです。

 

江戸時代に幾度となく財政危機が訪れていますが、その都度「〇〇の改革」と呼ばれるものを実施していました。しかし同時代のヨーロッパに比べ経済理論が未発達の時代、これらの改革は全て緊縮政策です。つまり倹約をして乗り切るというものに過ぎません。

1787年寛政の改革では囲米(かこいまい)と呼ばれる、コメの備蓄が命じられました。つまり貯蓄は国のための義務という発想だったわけです。

 

この発想は明治時代以降も続きます。戦費調達を国民の貯蓄から賄おうとしていたため、国策として貯蓄を奨励し続けました。

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貯蓄をせず借金をするなど言語道断の雰囲気だったことでしょう。

日本人はこの時代に美徳として国家から刷り込まれた価値観を今でも持ち続けているのかもしれません。

 

戦後も、復興資金をやはり国民の貯蓄から調達しようとしたため、積極的な貯蓄奨励が行われていました。

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次に借金についてですが・・・

 

住宅ローンの類が戦前はなかったかというと、そんなことはありません。当時の鉄道会社、箕輪有馬電気軌道(現・阪急電鉄)が沿線を開発し乗客を増やすために土地付き住宅の分譲販売を行っています。それまで現金での購入が当たり前だった時代に、月賦販売を始めた最初と言われています。

 

しかしそれは中流階級以上の人たちの話で、大多数の一般庶民には縁遠かったと思われます。

多くの日本人は、借金とは知人や親戚に頼んで借りるものだったでしょう。

だからこそ日本人は借金に対して根強い恐怖感と罪悪感があります。

 

原因は他にもあります。

金利への恐怖が刷り込まれていることです。

この恐怖感はもともとキリスト教圏でも存在し、高利貸しは悪魔と同列、とまで中世では言われていたようです。イスラム教におけるイスラム法シャリーア)では、現代でも利子を得ることは違法行為です。

江戸時代の日本でも高利貸しは質屋と並ぶ金融業者でしたが、暴利に苦しむ庶民が増え幾度となく幕府が規制していました。

 

1980年代のバブル期に異常な高金利で会社員に貸し付ける消費者金融が増え、自己破産者が増えた経緯もあります。反社会的勢力が経営する合法・非合法の消費者金融も沢山ありました。日本人の金融知識(金融リテラシー)が乏しいところに、厳しい取り立ての様子をテレビで見るなどによって、恐怖感が膨らんでいったのかもしれません。

今でもYouTubeではバブル期に反社会的勢力の人たちが取り立てをする様子を見ることが出来ます。

近年問題になった「自己破産者マップ」なる情報も、借金への恐怖感・罪悪感から、自己破産した人たちを叩くことに繋がっているのかもしれません。

 

借金への恐怖、貯蓄至上主義にはこのような歴史背景があるのです。

 

住宅ローンを借りて家を買うということに恐怖感と罪悪感を持つ人は今でも沢山います。日本人の価値観に繋がっているものなので仕方がないかもしれません。

 

では、借金と上手に付き合うためにはどう考えていけばいいのでしょうか。

 

覚えておいた方がいい感覚があります。

それは

 

「借金とはレバレッジ(てこ)である」ということです。

 

借金によって自己資本(貯蓄)では買えないものを買うことが出来、それによってよりよい生活を実現することが出来るのです。

 

自己資本他人資本を乗せて、より大きな金額を投資し、自己資本だけでは無理だった大きなリターン(利益)を得るということです。

 

この考え方は、奨学金や住宅ローンを捉える時に便利です。

奨学金という借金をして本来は無理なはずの教育を受け、将来の収入という大きなリターンを得ることが出来ます。

住宅ローンという借金をすれば、やはり貯蓄では買えない家を今すぐ手に入れることができ、所得税や住民税は節約でき、完済すると資産となり運用することが可能になります。

 

その一例がこのようなものです。過去記事を参照してください。

nagaokafpoffice.hatenablog.com

 

レバレッジとしての借金は「よい借金」とも言えます。借金は悪だと思っていると、得られるはずだったものが得られなくなります。

 

一方で悪い借金もあるでしょう。

 

高級車やブランド品など、自分をよく見せるためのぜいたく品です。これらを借金で買っても、完済する頃には無価値となっています。特に車は驚くほど短期間で無価値となるのはご存じの通りです。800万円の高級車も10年乗った後は買い手がつかずスクラップされるのです。値段が付いたとしても、運用と呼べるような金額ではありません。

これらは趣味の範疇なので余剰資金で買うものです。借金すべきではありません。

 

借金をし、利子を払う代わりに自分が受け取る金銭的なメリットはなにか?をよく考えてみると、住宅ローンの場合は沢山あることに気づきます。

 

借金によるレバレッジ効果が高いのが住宅ローンではないでしょうか。

 

もちろん、郊外の不人気な土地に寿命の短いローコスト住宅を買うと、住宅ローンは悪い借金になります。完済した直後に解体することになったり、子供が土地と建物の処分に困るような物件であれば、単なる負の遺産です。

 

返済した後の資産価値のことをよく考えて選べば、住宅ローンはよりよい人生の味方になるはずです。

 

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