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住宅購入に役立つお金のことを解説

相続土地国庫帰属制度とはなにか?

 

こんにちは。

住宅専門ファイナンシャルプランナーの長岡です。

 

本日のテーマは

 

相続土地国庫帰属制度とはなにか?です。

 

結論から言います・・・

かなり使いづらい制度です。

 

この制度の背景

 

20代、30代の方は全く想像がつかないかもしれませんが・・・

 

頑張ってこんな想像をしてみてください。

 

実家は地方の、それも僻地とも言える立地。

子供たちはみな都会や、近隣の都市部で就職、そしてそれぞれ持家を購入したとします。

実家の父母が亡くなった後、その実家の土地と建物はどうなっていくでしょうか。

 

まず、誰がその不動産を相続するか悩むと思います。そもそも子供全員が持ち家を所有しているわけですから、実家をもらう必要がありません。しかも不便な僻地。相続してしまうと固定資産税の支払いが毎年あります。空き家の火災保険料は非常に高額です。

 

建物というのは人が住まなくなると一気に劣化が加速するものです。台風のたびに実家の様子を見に遠くから行くことにもなるでしょう。空き家に対しても修繕費用が必要です。

 

「実家だけど、欲しくない・・・」

「お兄ちゃんか、お姉ちゃんが相続してくれ・・・」

というのが本音だと思います。

 

売却したくても誰も欲しくない土地と建物ですから、建物と土地の名義変更を登記せず放置・・・というのもめずらしくありません。

 

そのまま数十年が経ち、子供世代が亡くなったときに、孫世代がその家を処分しようと考えたとします。そうすると相続する権利のある「法定相続人」の人数が増えてしまい、全員の合意を書面で取り付けるのは不可能に近くなってしまいます。

 

さらにそのまま時間だけが過ぎ、最後には誰が管理している土地なのかさえ分からない「所有者不明土地」に。

将来その土地が欲しい人が現れても、所有者が分からないので手に入れようがありません。管理している人が分かったとしても、法定相続人全員から合意を取ることが出来ないため、売買はできません。

 

2016年には、所有者不明の土地は九州本島を上回る410万ヘクタールとなり、さらに広がり続けています。

 

そんな状態を打破するために、2023年5月27日から、「相続土地国庫帰属制度」が始まりました。

 

相続国庫帰属制度とは?

 

相続土地国庫帰属制度とは相続によって自分の持ち物となった土地を国に引き取ってもらう制度です。

 

使い道がないし税金も払いたくなので国にあげちゃいます!という気楽な制度かと思いきや・・・

 

実はこれには様々な条件があります。

 

これが実に使いづらい。

 

・建物は相続人の負担で解体すること

・境界がはっきりしていること

・汚染されていないこと

・担保権や使用収益権が設定されていないこと

 

いかがでしょうか。

 

手数料も支払う必要があります。市街化区域にある宅地であれば100㎡(約30坪)で548,000円、法務局での審査手数料として一筆あたり14,000円が必要です。

ハッキリ言って高いです。

 

最もハードルが高いのが、建物を解体しておくこと!

 

建物の解体には一般的に坪単価6万円~8万円が相場です。建て替えの場合は新築時に住宅メーカーが特別価格で坪4万円程度で行うこともありますが、一般的にはもっと高いのが現実です。

40坪の建物であれば、坪7万円として280万円程度が目安です。

 

さらにもし地盤改良によって地面に杭を打っていたら、その撤去費用も必要です。撤去費用は地盤改良の種類にもよりますが、地盤改良費用の2倍とも言われています。

 

 

先述の手数料と解体費用を合わせて考えてみると、相続人にはとんでもない金額の費用がかかります。

 

その費用を払ってまで国に引き取ってもらうべきなのか・・・

 

正直なところ、更地でもない限り、この制度は使いづらいのです。

 

所有者不明土地になる前に、相続が発生した時にはこの部分を含めて相続人で話し合ってみてはいかがでしょうか。

 

 

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